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京都家庭裁判所 昭和30年(家)2184号 審判

国籍

アメリカ(ニユーヨーク州)

住所

京都市○○区○○○町○○○住宅

申立人

ウイリアム・ピカツト(仮名)

外一名

国籍

日本

住所

京都市○○区○○○町○○○住宅

事件本人

林ヘンリー(仮名)

主文

申立人両名が未成年者を養子とすることを許可する。

理由

本件申立の要旨は、申立人ウイリアム・ピカツトは一九三一年一〇月○日米合衆国ニユーヨーク州○○○郡○○○○○○市で出生現在給料月四一六ドル二六セントを給せられている米国陸軍○○で滋賀県大津市にあるその○○○司令部に勤務し肩書住所に居住するものであり、申立人メリー・ピカツトは一九三二年六月○○日生れ両名は一九五三年六月○○日ニユーヨーク○○○○○ビルにおいて婚姻して以来一児を流産し一児は出生後間もなく死亡し現在子供がないので養子をしたいと考え○○キヤンブの牧師の紹介で大阪市東住吉区山坂町「聖家族の家」で未成年者を見同児が米陸軍○○を父とし本籍神戸市○区○○○町○番地の一筆頭者林キクを母とする児でキクの事情によつて「聖家族の家」に引取られていることを知り養子としたいと考え、昭和三〇年九月○○日之を引取つて以来養育しているものであるところ、未成年者は当時体重五ポンドであつたのが現在一一ポンドに増加し非常に元気になり両名夫婦によくなついているので、両名はもとよりこのような幼い子供を育てる苦労は充分承知しているが真に両名の間に生れた子と考えどんなことをしても愛情を以てこの児の幸福の為努力する意思をもち将来若し未成年者の弟或は妹が生れたとしても之と区別をつけるような考えは毛頭ないものであり、未成年者の母林キクも喜んでこの養子縁組を承諾しているのでこのたび申立人両名が未成年者を養子とすることの許可を求めるというのである。よつて申立人両名審問の結果、駐日米軍○○地区司令部副官部中尉人事課長ジヨン・エドワードの人事記録、両名の証明書、未成年者の親権者林キク本人審問の結果をそう合すると申立事実を認めることができる。しかして駐日米軍○○地区司令部法務中尉ロバート・ホルトンの証明あるマーチンデルハベル一九五四年版によるニユーヨーク州法抜〓によれば、同州法においては、成年の夫婦は配偶者とともに他の者を養子とすることができ、婚姻外の子の母親の承諾を要するところ本件養子縁組は以上の要件は之を充足する。

次に養子が一八歳未満の場合はその子が養親と六ケ月以上共に生活した後でなければ養子縁組をなし得ない。但し裁判所はこの要件を排除することができるとされているところ、申立人夫妻と未成年者は上記のとおり昭和三〇年九月○○日以来約二ケ月余同居しており、未成年者が申立人等の養子として米合衆国に入国するにつき法定の入国の許可の余地少くそのために申立人等において出来る限り速に神戸総領事に本養子許可の審判を提出することを要する状況にあることが認められる。この状況の下において法定の同居期間を短縮してこの養子縁組を許可することが未成年者の幸福のために適切であるといわなければならない。以上の他本件養子縁組の許可をさまたげる法規を発見し得ない。よつて本件申立は之を認容すべきものとし主文のとおり審判する。

(家事審判官 小林謙助)

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